築100年の木造を支えるコンクリートが作り出す新空間

Michiko JUTO Michiko JUTO
西国街道沿いの家, 一級建築士事務所 こより 一級建築士事務所 こより Phòng khách
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「再生」。個々の日常生活をはじめ、社会そして地球規模で注目すべきキーワードのひとつです。古くなって機能しなくなったり壊れてしまったものを丁寧に直し、新しい生命を吹き込み蘇らせ、さらに使っていくという概念が住まいにも顕著に反映されるべき時代が来ています。この住宅は築100年を越す木造住宅の改修と増築によって蘇ったもので、時を経て培ってきた力強さのある趣きを尊重しながら強度を補強し、これからも家族が住み続けていくために実現したプロジェクトです。

築100年余りの木造住宅 – 改修後の外観

プロジェクトを担当したのは、DATT一級建築士事務所とコラボレーションしたこより。京都の街道沿いに建つこの住宅は絵画活動をしているクライアントのためのアトリエと、高校生の子どもを含む家族3人のための住宅を併設しています。築100年余りの木造住宅は度重なる増築や改修で欠陥が生じていました。そういった問題点を解決しながら増築により快適な住環境を目指したものです。落ち着いた黒に近いグレーの外壁と水平方向に伸びるフォルムによって洗練された和モダンな雰囲気をもった佇まいを見せています。大きな木製の扉はアトリエへの出入り口で、住居には新設のコンクリート塀を奥に進んでアプローチします。

吹抜けのある堂々とした玄関

吹抜けのある玄関を入ると堂々としたコンクリートを打設した壁と良い色合いとなった既存の大梁が出迎えてくれます。新設の壁によって強度を持たせつつ新しい表情を住宅に添えたアイデアは、新旧がうまく融合した時間の流れを感じさせる空間を作り出しています。

職人的な仕事が随所に見られる住宅

土間は墨を混ぜたモルタルで仕上げており、自然な風合いを持たせたコンクリート壁と共に何とも言えないラフな質感と色を醸し出していますね。楡材の付き板仕上げの壁付けの下駄箱も含め、手工芸的な丁寧さと自然な味わいが調和したエントランス空間ですね。

新旧エレメントの融合で家の歴史が続く

玄関から主要な生活空間であるダイニングキッチンとリビングルームへと続きます。年月を経た梁や構造材を新たな部材で支持しながら大空間を確保しました。吹抜けのある開放的な計画の中に、各ゾーンを構造体によって割り振ることで、曖昧に仕切られたひとつの空間が生まれました。新旧のエレメントが見事に融合した家族が集まる心地良い場所です。

丁寧な改修と増築で生まれた豊かな空間

リビングの吹抜けと上階の居室はガラスで仕切ることで緩やかな連続性を生み出しています。光の交差と人の気配が感じられる立体的な開放性のある計画にも新旧のエレメントが構成する折衷性が反映されています。そして同時に時代や場所を感じさせないデザイン – 例えばボール型の照明 – が新旧どちらのエレメントにもしっくりくるんです。

打ち放しコンクリートと相性の良い伝統的な建築要素

玄関とLDKの間を障子を設え、和モダンなテイストを取り入れています。新しい要素としてのコンクリート壁と100年以上経った既存の柱梁、新規に導入されたキッチンの造作家具や年代物のピアノがまるで各々の色合いと個性を主張しつつお互いに気を使うように収まった時を継承した新空間が生まれました。

古くても広がりのある空間は確保できます

大梁が古民家のようなリビングに設けた大きな開口を開けると 木板の垣根で囲まれた庭と繋がります。ダイニングキッチンの上部に設けた上階にと吹抜けによる空間の伸縮と外部空間への広がりによって連続性を持ちながらもメリハリのある空間が生まれました。大きな梁が走る室内は暗くなりがちですが、高窓からの採光によってうまく解消しています。

家族が集うオリジナルのキッチンとダイニング

コンパクトにまとまったダイニングキッチンエリアを見てみましょう。キッチンブロックは何とも言えない色合いの天板の研ぎ出し、そして造作テーブルも左官仕事で仕上げています。手の込んだオリジナルの家具や設備を設えることで、丁寧に住み続けていくクライアントのこの家への愛着が伺えますね。

自然の移ろいを感じる室内

キッチンに立つと坪庭のような中庭空間がダイニングエリアを隔てて目の前に広がります。様々な方向に配置した外部空間では日の光が作り出す陰影や自然の移ろいが異なる表情を見せ、室内の至るところで眺めが享受できるんです。庭を中心に配置された居室構成が広がりと動線の豊かさをもたらしてくれる住宅なんです。

明るいけどしっとりと落ち着いたアトリエ空間

次にアトリエを見てみましょう。打ち放しコンクリートと相性がぴったりな艶のある床はラワン合板を使用しています。天井高をたっぷり確保し、高窓から採光を取り入れ、籠もり感と開放感が同居したような仕事場ができました。壁一面には機能的なカウンターや収納を造作で設え、創作活動を支える控えめなインテリアでまとめています。

空間の心地良さはデザイン力で決まる!

クライアントの要望を考慮しながら機能性と耐久性、そして端正な美しさを同居させたアトリエの使い心地は、いわば職住接近というライフスタイルの中でいかに創作活動に専念できるかで判断されると言えるでしょう。 新旧のエレメントがお互いの良さを引き出し、調和する空間づくりに建築家のプロフェッショナルなデザイン力が反映されています。

モダンな屋根裏部屋

屋根裏のフリースペースも設けられています。既存の骨太な柱や梁と繊細なガラスがマッチしたモダンでありながらどこか懐かしい雰囲気をもった多目的空間、どんな使い方がされるのでしょう。ガラスを介してリビングと繋がっています。

障子の光と漆喰壁による籠もり感

外界とのコンタクトをほとんど遮断した繭の中みたいに暖かくて明るい籠もり感のあるこの部屋は、畳敷きではないのですが障子を設えているせいか和室のような印象を受けます。きっと丁寧に塗り籠められた壁から天井に続く漆喰もその印象を強めているのかもしれません。全体をミルクティーのように優しい色で統一したこの空間には北欧風のデザイン家具もぴったりはまりそうですね。

左官仕上げの陰影のある浴室

小窓から差し込む光によって映し出される陰影の美しい浴室も珍しい左官仕上げです。コンパクトに設えたバスタブに使っていると静寂の中で安らぎを延々と感じられそうな浴室ですね。

時の流れを感じる住宅

古いモノを大切にしその価値を見い出すこと、新しいモノを取り入れながら快適な環境を作りだすこと、それは現代の社会で様々な分野において見られる態度ですが、その均衡をとることはそう簡単ではありません。住宅にとって大事なことは気持ち良く暮らせることです。それは新旧のエレメントが混ざり合って生まれる空間でも可能だということを教えてくれる木造住宅。時間を経ていい具合に成長した庭も真新しいものにはない趣きと価値を持っています。

写真:吉田祥平

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